読む/書く

ちょっとずつ読んで、書いてみる

「新訂 字訓 [普及版] 白川静 平凡社」 P366 「岩波国語辞典 第八版」 P1567 「角川 新字源 改訂新版」P1430

 

鏃というものがある。岩波国語辞典では

「やじり」「鏃、矢尻」 矢の先のとがった部分。

とされている。

 

先端にありながら、しり とはどういうことだろうか。

字訓で、しり を引いてみる。

 

しり「後、尻、臀」

うしろの方を言う。口に対しては「しり」、「まえ」に対しては「うしろ」。「しりくめなは」は、末端を結んだ縄のことである。また「しりへ」ともいう。後方の意である。

 

中略

 

後もそのような呪儀で、禦と同じく敵を退ける方法であった。我が国の古俗にも「しりへで」を忌むことがあり、伊弉諾尊が「劔を抜きて、背に揮き」[神代記上]黄泉平坂から逃げ帰った話、また海幸山幸の説話に、釣針を「後手」[記、上]に与えたことは、いずれも呪的な意味を持つ行為である。後には不祥・不幸の意があったらしく、「水門の潮の下り海下り于之盧も暗に置きてか行かむ」[紀120]のような挽歌がある。

 

後略

 

 

「しり」にあたる後という字は敵を退ける呪儀を表すのだという。

敵を退けるための部位である鏃に、「やじり」という音を当てたのはそういう意味を持たせてのことだったのだろうか。わからない。