「仁を第一とするのは何でですか?」
「仁の徳は大きいのです。ただ、一言で表すなら、愛です。
君臣の関係性なら、義と言いますし、親子なら親、夫婦なら別、兄弟なら叙、友人ならば信。これらはみな愛から出てくるものです。愛は実心です。君子慈愛の徳よりおおきいものはないでしょう。残忍刻薄のこころよろひどいものはないでしょう。
孔子一門が仁を以て徳のトップとするのは、このためです。
だから仁が第一なのです。
徳を知らない者にはこれはわからないでしょう。また信じることもできないでしょう。
そして、必要ないとして別の道に去り、哲学的に難しいことを難しく語り、実体のない空虚なものに耽り、人を理とし、知覚として、日常に使うことができない。だから、徳を知らない者に仁を言っても、わからないだけではなく、無駄なのです。
忠信を主として、論語と孟子を熟読して、実徳を求めることを以て心とすれば理解できるでしょう。昔の人の過ちを繰り返してはなりません。」