たしか吉川英治の宮本武蔵に、「あたら若者が…」というようなセリフがあったと記憶している。小学生の時分、よくわからず「新しい若者」という意味では使っていなさそうであることだけが伝わった。
読む小説の主人公などから、語彙に影響を受けているのだなと思う。私自身、子供のころから古い小説を読むのが好きだったので、語彙が古めではある。
あたらし「惜」 「あたら」の形容詞形。その価値にふさわしくない取扱いを受けることを惜しむことをいう。「あたる」を語幹とするもので「行く~床し」と同じ造語法である。「あたらしぶ」はその動詞形である。あるべきものが、なお現実としてもたらされない事態に対する不満や嘆きの感情を含む。類義語の「をし」は失われることへの愛惜をいう。「新し」とはアクセントの相違があったようである。
中略
秋の野に露負える萩を手折らずて安多良盛りを過ぐしてむとか[万4318]
秋の野に萩の花に露が落ちている。そんな盛りの時期を無為にすごすのかい。
焦燥感が感じられ、心情がよくわかる気がする。
宮本武蔵のせりふ、「あたら若者が…」には、「(かかってきても勝てないから)せっかくの命大事にしろ」「本来はこんなところで勝負を挑まず、修行に励め」そんな意図が含まれていたのだろう。