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「新訂 字訓 [普及版] 白川静 平凡社」 P13

[あきらか]「明、顕」

ものごとの全体が正しく知られるような状態をいう。語源は「あく」。「明るし」は光の感覚であるが「あきらか」は情理の全体について、はっきりと知られる意。「明らけし」はその形容詞形。「明らかに」は副詞形。「明けらむ」は動詞下二段。類義語の「さやか」は視覚のほかに聴覚をも含む語である。

秋の花種なれど色ごとに見し明むる今日の貴さ[万4255]

 

顕も明も神明に関する字である。

視覚、聴覚でということはもちろん、その情理全体を含んで、ものごとの全体が正しく知られるような状態というのは、神明にも相当するような難しいことであったのだろう。

文字や言葉で伝えようとしても、情理全体を含めて正しく知り、それを正しく伝えることは自分で実現することができることであってもたいへんに難しい。

技術伝承について、すぐにマニュアルだとか、手順書を作成せよという昨今の状態は意地悪をして教えないことと、教えても吸収できないことを度外視し、情理を含めた全体ということを単純に考えているように思われてならない。